アカデミックレストランレポート: 2009年7月

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2009年7月

【7/20大阪】トスカーナのマンマ直伝~ルッカ地方の夏野菜料理~in欧来食堂TANAKA

トスカーナのマンマ直伝~ルッカ地方の夏野菜料理~

■日時 2009年6月20日18:00~
■場所 欧来食堂TANAKA(お料理;田中 稔オーナーシェフ)
■講師 石井 郁子先生 ベジタブル&フルーツマイスター

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イタリア料理、中でも今回はトスカーナ州の古都「ルッカ」という一地方、マンマ直伝の家庭料理の夏野菜にスポットを当てるというとても興味深いテーマです。
お料理をしてくださるのは、大阪・谷町四丁目にある「欧来食堂 TANAKA」のオーナーシェフであり、ワインのソムリエであり、ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスターと、多彩な資格を持ち、また自らも野菜を栽培、一方、来年にはなんとオリジナルワインもリリースされるという凄腕シェフです。
そして講師をしてくださる石井先生は、アロマテラピーインストラクターとベジタブル&フルーツマイスターの資格を併せ持たれ、「美と健康」をテーマにした講座やレシピ提案、食育など幅広く活躍されています。今回の講座の中にも野菜の持つアロマ効果なお話もところどころに散りばめてくださり、とても楽しくうかがえました。

『スローフードが根付く、トスカーナ・ルッカ地方』
花の都フィレンツェの北、トスカーナ州の古都「ルッカ」にほど近いコローニョラ村は、日本と同じように軟水が湧き(イタリアは一般的に硬水)、どこか日本を思わせる景色が広がっているそうです。畑でとれた味の濃い、おいしい野菜やハーブ、マッサマチナイヤに咲く野草の蜜を集めた野生味溢れる蜂蜜、継ぎ足し継ぎ足ししながら作られる年代もののワイン酢、それらの素材を活かすシンプルな調理法で作られ、受け継がれてゆく身体にやさしいマンマの手料理・・・特にこの地方では、人類最古の穀物といわれるファッロ(スペルト小麦)、またインゲン豆やウズラ豆などさまざまな豆やハーブを使ったお料理がよく食卓にあがるそうです。まさにスローで豊かな食生活、地産地消そのもの。そんな風景を思い浮かべただけで、これから紹介されるお料理にわくわくしてきます。
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本日はそんな素朴だけどしみじみあったか~い、野菜の力を引き出すマンマ直伝のお料理を田中シェフが再現してくださり、石井先生が解説してくださりました。

■オリジナルカクテル
ベリーニ(完熟桃のカクテル)で乾杯! 
私も大好きなベリーニ。桃のピューレをスプマンテで割ったイタリアを代表するカクテルです。しかも本日のものはシェフのなかなかのこだわりものでした。
桃の花落ちのところが程良く薄いピンクになるまで程良く追熟させたころを待ってカクテルにしたものです。グラスから立ち上がる桃の甘い香り、さすが今まで飲んだものよりも、桃の風味がしっかりで濃厚。絞りたてのジュースのようだったので、皆さんグビグビ進んでいらっしゃいました。
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■アンティパストミスト
『カルチョーフィのフリッタータ』
カルチョーフィとはアーティチョークのこと。
イタリアのものは小ぶりで、アクが弱く、全体が柔らかいので外側の部分を取り除くと食べれます。日本ではまだ定着していませんが、ボイル、グリル、フリット・グラタン等万能。本日はオムレツ仕立てになってました。
『うずら豆のオーブン焼き』
イタリア人は「豆食い」で料理に豆を多様します。うずら豆にオリーブオイルをかけ、オーブンでふっくら、ほっくり焼きあげます。
『ペペロナータ、ズッキーニのフリット』
ペペローネはピーマン。皮をむいて焼き、シェリー酒で味と香りを引き立てます。
『ファーベのサラダ・ペコリーノチーズ添え』
ファーベはソラマメのこと。イタリア南部では乾燥のものをよく使いますが、中南部では出始めのころこのように生で、ペコリーノチーズと合せて食べたりします。
『メランツィーナのグラタン』
メランツィーナはナス。イタリアのナスは丸型、長型、卵型とありますが、全般的に賀茂ナスのように大きいものが多いようです。加熱すると甘みが増します。
『グラントゥルコの焼ポレンタ』
グラントゥルコはイタリア語で「トルコの小麦」でスィートコーンを指します。ポレンタはとうもろこしを粉にしたもの。イタリアではミネストローネスープ等が余ると次の日ポレンタ粉で固めて焼いたりするそうです。
『オリーブオイルのジェラート』
フルーツのような味わいのエキストラバージンを攪拌して乳化、ピリッとする辛み、温度の変化による味わいの変化を楽しみます。
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田中シェフのお料理の中でもいつも五感を楽しませてくれるのがこの可愛らしく盛り付け
られ、ちょこちょこいろいろ楽しめるアンティパストミストのプレート。必要以上に手を
加えず、野菜本来の美味しさが味わえる、でもシェフのセンス光るお料理たちでした。

■オリーブオイルの食べ比べ
ここで少し趣を変えてオリーブオイルの食べ比べです。オリーブオイルも産地によってさ
まざまな味わいがあることに気付かされます。用途、お料理によって上手く使い分けして
楽しみたいものです。
1.PASQUINI <イタリア・トスカーナ>
  まろやかで青みもマイルドでした。
2.ETIOΣ(オーガニック) <ギリシャ>
  さらりとしていてスパイシー。後に引く苦味がありました。
3.COLAVIATA<イタリア・モリーゼ>
  最初苦味が目立ちますが、広がる味わいが綺麗です。
4.ARDOINO<イタリア・リグーリア>
  フルーツの甘みある味わい。軽くさらりとした味わい。
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■プリモピアット 『ファッロのサラダ』
人類最古の穀物といわれるファッロ(スペルト小麦)。ルッカのファッロはEUが定めるIGP(保護指定地域特産物)に認定されています。食物アレルギーなどを持つ人にも対応でき、栄養に富み、夏場は茹でて和えものやサラダ風に、冬は煮込んでスープやニョッキに、粉にしたものをドルチェにと日常に欠かせません。今までは作ってもお金にならない穀物と位置づけられましたが、健康志向、スローフードが取り上げられるほどに再浮上してきました。
今回のお料理はオリーブオイル、オリーブの実、トマト、バジルで和え、さっぱりいただけるサラダ風でした。ファッロのプチプチ、だけど弾力があり、しっかり小麦の旨味も感じ、食べ応えもあり、美味しかったです。
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■セコンドピアット
『スズキのフリット カーボネロのラグーソース』
スズキもふっくらしていて美味しかったですが、注目はソースとして下に敷いてあるカーボネロのラグーソースです。カーボネロはトスカーナ地方名産の野菜で黒く、結球しないキャベツです。黒いといっても深い緑で、葉はちぢれて細長いです。ビタミン、ミネラル等豊富で、オリーブオイルとの相性抜群、炒め物、スープ等トスカーナの料理には欠かせないそうです。本日も上質なオリーブオイルで炒められていて、味わいはどことなく高菜のようで、スズキとの相性も良かったです。
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『ビーフサーロインのタリアータ ピンツィモーニオ』
そして肉料理です。タリアータは薄切りにした肉料理を指し、上質な肉をシンプルに調理していただく料理に使われます。今「キアーナ牛」はイタリアでも生産量が少ない高級牛ですが、今回はとてもその味わいがキアーナに似ているというUS牛(牛のナンバーで特定されています)で、穀類が少なめ出草類を多く食用するもの、が使用されました。味付けは塩と胡椒だけとシンプル。だから柔らかくてジューシーな肉の旨味を存分に堪能できました。頭の中では、まだ食べたことのないキアーナ牛をイメージしながら・・・。
そして肉料理の付け合わせはトスカーナでは「ピンツィモーニオ」と呼ばれている野菜のスティックサラダです。ニンジン、島ニンジン、キュウリ、白キュウリといろどり鮮やかで、それぞれの味わいや香りの違いもしっかり楽しめました。
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■ドルチェ 『コンビト風ピエトラ菜のケーキ・グラパラリーフのシャーベット』
ルッカ地方コンピト村風のケーキで、固くなってしまったパンを牛乳でふやかし、卵、イタリアンパセリやピエトラ(ふだん草)などを使ってタルト状に作るケーキです。
ドルチェも普段のお野菜をうまく利用したりするのですね。そしてこのケーキはタルトの周りを冠のように尖らせる=ベッコ(鳥のくちばしの意味)と呼ばれる部分が特徴的です。マンマ達はこのベッコをかっこ良く作ることこと、にも競って腕をふるうそうです。
ピエトラは暑さ寒さに強く一年中収穫でき、甘くて柔らかく、カロテン、カルシウム、鉄分が豊富です。ケーキはとてもボリュームがあって、タルトの部分はサクサク、中はふんわり、しっとり、ピエトラの深いグリーン色が鮮やかで、風味は色の鮮やかさほどの青くささはなく、柔らかい甘みで、ケーキ素材ともしっくり馴染んでいます。甘さ控えめで、ボリュームを感じつつも、どんどん進む味わいです。
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そして石井先生が野菜ソムリエとして広告塔ともなり広められている「グラパラリーフ」がシャーベットになってでてきました。これがまた美味しいのです!特に食後にはぴったりです。レモンや青リンゴのようなさわやかさがお口の中や、胃をすっきり、ひんやり冷ましてくれるようです。グラパラリーフはまだ日本には馴染みが薄いですが、中南米やアジアの一部地域で健康野菜として食される多肉植物で、ビタミンやミネラルたっぷり。そのまま摘まんでで食べても美味しい手軽さから、今後注目されています。

**感想***
トスカーナのルッカ地方という遠く、私もまだ一度もいったことのない所ながら、美味しい野菜やお料理、お話、雰囲気からまるで、その地方の中の家庭に招かれたような感覚で楽しむことができました。今回は参加者の座席もランダムに設定され、それがまた新しい出会いとなり、自己紹介、情報交換したりと、とても和やかに、まとまった雰囲気で進められたのも良かったと思います。参加された皆様もとても楽しまれている様子でした。
そして田中シェフの、必要以上に手を加えず、素材の持つ味わいや力を極限にひきだしたお料理の数々はとても香り高く、味わい豊かで、野菜の魅力を再認識させてくれました。またさまざまなお料理をいただき大変満足しながらも、全く胃がもたれていないのもこうしたことからだと実感しました。今後、私自身も「野菜の魅力を伝える」ために、たくさんのエッセンスをいただきました。とても楽しくて、美味しくて、有意義な機会となりました。本当にありがとうございました。

★井上 晶子(いのうえ しょうこ)★
ベジタブル&フルーツマイスター
日本ソムリエ協会認定 ワインアドバイザー 
ワインと野菜の魅力にはまり、現在は両方の資格を活かしながら野菜・ワイン、他広く「食」を販売する仕事をしています。今後はさらに「美味しい野菜を美味しいワインと共に!」をテーマに「野菜とワインの魅力」を伝えてゆきたいと考えています。

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