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アカデミックレストラン Vol .11at 代官山 花壇 笑龍 (渋谷西武店)

日時:2月13日(水) 19:00~22:00
場所:「代官山 花壇 笑龍」渋谷西武店
講師:髙島正秋さん(笑龍総括マネージャー  ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター)

テーマ:「青森の旬な食材」

1 野菜・果物の面白さ、そして楽しさを伝える情報発信の場を提供するアカデミックレストラン。今回のテーマは、『青森の旬な素材』。
なぜ、青森なのか? そして、冬は雪で覆われてしまう土地で、旬を迎える野菜・果物にはどんなものがあるのでしょうか?
「何か新しい発見があるかもしれない!」  そんな期待を抱いて参加しました。2

会場となった「笑龍」さんは、漢方薬局監修のもと、本物の食材と薬膳の技法を活かして作る中華料理が魅力のお店。そこで私達を迎えてくれたのは、薬膳料理の優しさと青森の魅力ある食材の数々でした。

まずは、『体にやさしい冷菜』3品。
体を温める効果が期待される山椒・葱・生姜等の素材を使用。メインディッシュへの準備を整えます。

【温泉もやしと一町田セリの山椒ソース】
3 津軽藩主が大鰐温泉で湯治する際に献上されていたと言われる温泉もやし。
温泉熱を利用した土耕栽培。栽培途中でかける水も収穫後に洗う水も温泉を使用。大きさは30cmほど。旬は冬。栽培方法・タネは門外不出。しかし、栽培農家が数件になってしまったため、大鰐町は後継者の育成を始めました。種類は、豆もやしとそばもやしの2つ。そばもやし(写真手前)は、細くてシャキシャキした歯ざわりが心地良い。豆もやしは、山椒のソースに負けない味の濃さ。これが土耕栽培の魅力なのでしょう。そして、『清水っこ(しずっこ)』と呼ばれる清らかな湧き水で育った一町田(いっちょうだ)のセリ。香りが清冽。
一町田地区は、一年中一定温度を保つ豊富な湧き水のおかげで、真冬でも水田が凍らないのだそうです。

【干し菊とくらげの甘酢】
4  干し菊は、食用菊の花びらを蒸して板状に乾燥させたもの。漢方では、自律神経を安定させる働きがあると考えられています。普通の食用菊のような苦味は少なく、歯ざわりや香り、美しい色彩が楽しめます。保存がきくのも魅力の一つ。
 お皿に添えてある人参は、『深浦雪にんじん』。通常秋に収穫する人参を雪の下で越冬させたものです。人参が雪の下で低温にさらされると甘くなるのは、寒さで凍ってしまわないようにエネルギー源である糖分を増やし自己防衛するため。肉質は普通の人参より柔らかく、生でも食べやすい感じがしました。この人参は、ジュースにすると想像を超えた甘さと飲みやすさを兼ね備えたものになるのだとか。
現に生産量の4割ほどは、ジュースにして販売されているそうです。

【青森シャモロックの葱生姜仕立て】
5 青森県畜産試験場が20年もの歳月をかけて開発した『青森シャモロック』。父は、繊細な肉質と濃厚な味わいを持つ『黄斑シャモ』。母は、ダシがよく出る『横斑プリマスロック』。両親の長所を受け継いだ子供が、健康的にのびのびと育つように環境を整えることで、さらに味を向上させています。
飼育期間は、ブロイラーの約2倍(100~120日)。平飼い(放し飼い)され、動き回るのに充分なスペースが与えられています(1平方メートルあたり5羽以下)。また、餌には青森県産にんにくの粉末を添加。
食欲増進効果で発育が良くなり、ビタミンB1の含有量も増加しているそうです。箸でスッと切れるほど柔らかで、口の中で濃厚な肉汁が溢れるジューシーな肉。青森県が誇る地鶏と言われるわけです。
 そして、特筆すべきもうひとつの素材は、ヤーコン。生のまま切って並べただけとは思えないほど甘く瑞々しい。
まるでフルーツのようでした。「今まで食べていたヤーコンは何だったんだろう?」と思うほどの衝撃でした。

さて、いよいよメインディッシュです♪

【青森産初雪たけとむつ産ホタテの“自家製”XO醤】
6  初雪たけは、なめこの突然変異株に改良を重ねて誕生したもの。香り高く味にクセが無いので、様々な料理に使えます。なめこ特有のヌメリは僅かにある程度で、白いブナシメジのような印象。でも、食感はまさに“なめこ”。面白い素材です。
 また、陸奥湾は、ホタテの養殖が盛ん。植物性プランクトンが豊富なので、人間が餌をやらなくても元気に育っていきます。漁師さんは、海の環境を守ることで、生態系維持に努めています。採用されている養殖方法は、『垂下方式』。ホタテをネットの中に入れて、または、海中に一枚ずつ吊るして育てます。こうする事で、ホタテの中に砂が入らないのだそうです。
笑龍特製のXO醤は、ホタテの柔らかく甘い貝柱と野菜の旨みを引き立てていました。

【フカヒレの翡翠茶碗蒸し】
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コラーゲンたっぷりの濃厚なフカヒレスープの下には、茶碗蒸し。中にはホクホクのユリ根。ユリ根は、漢方で精神を安定させる効果があると言われています。上にかかっている緑色のものは、青菜の色を翡翠に見立てた“あん”。使われているのは、『冬陽春菊(ふゆびしゅんぎく)』。良い味のアクセントになっていました。温泉熱と冬の柔らかな日差しが育む春菊は、関東で出回っている株立ち型(若い茎葉を摘み取る)と同品種であるにもかかわらず、青臭さが少なく味もまろやかなのだとか。

【十和田市産ダチョウとおこげのサクサク炒め】
 8_2                   高たんぱく、低脂肪、低カロリーな肉として認知され始めているダチョウ。
これを色とりどりのパプリカとアピオスで炒め、五穀米&黒米で作ったおこげを軽く崩して一緒に。ダチョウ肉は、あっさりした味。後味に鉄分を感じましたが、レバーのようにきつくないので、「鉄分補給する必要があるけれどレバーは苦手」という方にお勧めです。脂身が少ないので、コレステロールが気になる方にも。
ダチョウは、主にアフリカのサバンナで生息しているので、これを青森で育てる為には、新しい飼育方法を考えねばならず、生産者の方は軌道に乗せるまで大変苦労されたそうです。ダチョウの寿命は、50~80年。とても長生きです。食用とされるのは、生後1年2ヶ月くらいのもの。身長は2mを越え、体重も100kg以上に。ダチョウは、とても人懐っこい動物なんだそうですが、そんな体で甘えられてもちょっと厳しい!?
アピオスは、アメリカ大陸原産のマメ科の植物。和名は『アメリカホドイモ』。スイートピーのような花が咲き、地中に数珠つなぎになったイモ(3~6cm)が放射状に伸びます。ホクホクした食感で、甘さほんのり。
栄養価が高く(特にカルシウム・鉄分・食物繊維)、アメリカインディアンが古くから利用している食材。
これが、どのようにして青森に伝来したのか? 一説には、「明治の頃、アメリカからりんごの苗木を輸入した際、土に紛れ込んでいた」というのがありました。本当のところはどうなのでしょう? この疑問は、頭の片隅に置いておこうと思います。

【中華春餅(シュンピン)】
10  皮の上に好みの具材(野菜・肉etc.)をのせて甜麺醤(テンメンジャン)を塗り、皮を巻いて食べる春餅。中華風クレープと言えるでしょう。
 写真左上の肉は、『ガーリックポーク』。青森県特産にんにくを粉末にして飼料に加えることで、ビタミンB1含有量や肉質を向上させるだけでなく、ニンニクの抗菌作用を活用して抗生物質の投与を抑えています。

【津軽海峡メバルのフルーツ果実酢添え】
 11                  漢字で書くと『目張』。その名の通り眼が大きい。青森でメバルと言えば“うすめばる”。体長は、約30cm。淡白でしまった白身は煮付けや塩焼き、唐揚げに最適。そのメバルを丸ごと豪快に唐揚げにし、イチゴ・パパイヤ・ぶどう・りんごを添えた果実酢のソースとともに。仕上げは、『ジョミ』を使ったビネガーをたっぷりかけて。
 果実酢のソースだけ食べると甘すぎると感じるのですが、メバルと一緒に食べるとピッタリ合う不思議な料理でした。フルーツと魚は結びつけづらい素材ですが、このような料理も出来るのだなと関心していました。
 ジョミは、山に自生するガマズミの果汁を絞って作ったジュース。晩秋、山の実がなくなってきた頃に赤い小さな実を実らせます。冬期に山で狩りを行なう“マタギ”達が、疲労回復するために食べたと言われています。
天然のクエン酸・リンゴ酸・ポリフェノールが豊富に含まれている事もあり、味はベリー系の目が覚めるような甘酸っぱさ。
 そして、皿の上部に並べてあるリンゴの名前は、『赤~いりんご』。果肉・花・枝・若葉までも赤い珍しい品種(ちなみに、葉は赤紫色から緑に変わる)。特有の酸味・渋みがあり、生食には不向きですが、加工すると皮も実も真っ赤に染まります。煮たらどうなるか実際にやってみたいですが、まだ生産量が少ないので、入手困難のようです。もう少し時間が必要ですね。

【蓮子の葉包み温暖食チャーハン】
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チャーハンを蓮子の葉で包み蒸し上げた料理。胃腸の働きを活発にし、血流を良くして体を温める素材がふんだんに入っていました。チャーハンというより炊き込みご飯のイメージ。食べ終わる頃には額に汗がにじんでいました。
私が手にしている黒い素材は、『黒にんにく』。にんにくを発酵させて作ります。元来、にんにくは糖度が高いのですが(普通のもの:約30度 青森産:40度以上)、ニンニクが持つ辛み成分によって甘みを感じられなくなっているんだそうです。発酵により辛み成分と臭いの成分が和らぐ事で、にんにくが持っている甘みが引き出され、栄養価も高くなった黒にんにく。皮を剥けばそのまま食べられる柔らかな食感。味を表現すると、
「まろやかになったにんにくの味と香りとともに、プルーンのような甘酸っぱさが広がる」といったところでしょうか。

そして、仕上げはデザート。

【甜茶風杏仁豆腐】
14 杏仁豆腐は、中華料理の定番デザートの一つ。杏仁は、アンズの種の中の白い部分。これが杏仁豆腐とともにコロンと入っているのが嬉しい。
甜茶の苦味成分は、花粉症の症状を悪化させるヒスタミンの放出を抑制する効果があると言われています。甜茶のゼリーの苦みが杏仁豆腐の甘みを引き立てていました。

【津軽冬葡萄・スチューベン】
9_4 青森のスチューベンの生産高は、全国の8割を占めています。
青森がぶどうの産地である事は、少し意外な感じがしますよね。
スチューベンの生まれ故郷・ニューヨークと青森は同緯度(北緯41度)であったため、気候風土がピッタリ合ったのです。また、糖度が高く貯蔵がきくスチューベンを、りんごの貯蔵技術を応用した施設で保存。冬の間も楽しめるようになっています。
種があるので少々食べにくいですが、それはジベレリン処理をせず自然に育てられた証拠。多少の手間が掛かってもいいから食べたいと思わせる濃厚な甘さが魅力の葡萄でした。

今回、笑龍さんの料理を食べてみて感じたのは、素材とお客様に対する心づかいです。
素材の味を活かした優しい味わい。食べていくうちに、素材の良さを薬膳の技法が引き出し、体を労わってくれる感覚に包まれました。熱々のものや辛いものを食べた訳ではないのに体がジワッと温まっていき、最後は指先まで温かくなりました。
また、食欲増進や美容に良いだけでなく、心をリラックスさせ、体を春に向けた準備も出来るよう構成されたメニューに、統括マネージャーである髙島さんの人柄の良さを感じました。ありがとうございました。

そして、温泉熱・特産物・寒さなど、地域に存在する資源・特性を積極的に活用し、新たな可能性を切り開こうとしている青森の農業に対する期待が高まってきました。これからの展開が楽しみです。
冬の間、雪に閉ざされてきた木々が一斉に芽吹く『春もみじ』のように、今までの、そしてこれからの努力が
実を結ぶことをお祈り致します。

ベジタブル&フルーツマイスター  平田 実
巷に溢れる健康情報に左右されず、今の自分に必要な栄養素を考え、食事を選択できる
生活者が増えていったらいいなと考えています。『肩ひじ張らないベジフルライフ』を目指し、
実現方法を探索中。長野マラソンを愛する市民ランナーです。
http://forest6pixy.seesaa.net/

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